水沢・黒石の正方寺を尋ねて

我が家の宗門、この目で

五月雨の降る六月十八日、公民館婦人部主催の日帰りミニ旅行の話は今まで再三聞いていたが、東北の名刹で吾が家の宗門・曹洞宗第三の本山である大寺院参拝の機会を逸していたが、婦人部の計画で、男の出る幕ではないと思っていたら、御仏の引き合わせか、お慈悲なのか、募集人員が予定より不足で再募集となり、老若男女総参加となった。

喜び勇んで老友を誘ってみた。嬉しい事を独占出来ない性分で、二、三人誘ってみたが何しろ急な話で都合がつかなく、それでも老男三人が顔を揃えた。当日は曇り空だったが、迎えのマイクロバスで出発した。

黒石の正法寺まで一時間半で到着、総門前で下車した。まるで六百年前の世の中にでも戻った様な気分だ。老杉の林の中、青葉の陰に聳える萱ぶき屋根の大伽藍と昔のままの自然石の入り口の石段と、見る物総ては古色蒼然たる佇まいだ。霧雨が降り、あたり一面梅雨空に煙っている。芭蕉に見せてやりたいような風景だ。

拝観者の入り口で説明書を渡され奥に進む。本堂の天井の高いのには驚いた。曹洞宗は禅宗で派手を戒め、内部は華麗な所はない。庭園も広大だが、枯淡で閑寂の美の趣きです。すべては佗と寂の連続だ。私の期待していた通りの雰囲気で、予定時間を過ぎるまで、心おきなく撮影できた。

一行はバスに乗り私の帰りを首を長くして待っていた。雨もあがり、無事発車オーライとなった。