乾燥中のネガ。私自身、まとまった数のネガを観察する機会は少ないので、この作業は当時の賑わいや父の仕事を辿る貴重な体験でもあります。

震災から14年が経ち、ようやく向き合えているものがあります。


 2011年3月の東日本大震災では、当館の所蔵するフィルム群はほとんど無傷で残ったものの、一部は水没しました。ここ数年、夏になると被災ネガを洗浄し整理する作業をしています。今頃?とは自分自身も感じるところですが、震災後すぐには向き合う事が出来ず、長い時間を経て少しずつ取り組む余裕ができました。

被災したネガケース。津波といっても、道端の排水溝から溢れてきた真っ黒な水でしたのでフィルムに何らかの悪影響を及ぼしたのかもしれません。
ネガシートに癒着したフィルム。端の部分に水が溜まり乳剤面が影響を受けたものと思われます。


 浸水後、すぐに乾燥したものには目立った損傷はないのですが中には乳剤面(像を記録する部分)が溶けて癒着しているものが見受けられます。今作業しているのは先代である父・尚武が撮影した記念写真で、昭和60年頃の4×5カラーネガフィルムです。

 その一枚一枚を手に取ると、当時、毎週のように行われていた結婚披露宴や集合写真撮影など、息つく暇もなく父が奔走していた様子を垣間見ることができます。

洗浄中の様子。紫色に見えるのが溶けて癒着していた部分。汚れと、この溶けた部分を洗浄するのが作業の目的です。

 これらを水に浸し洗浄していく時、写真に写る人たちの笑顔が一際輝き、父の安堵する姿が目に浮かびます。

洗浄後のネガフィルム。溶けた乳剤面はほとんどが剥がれ落ち、透明な支持体だけが残っています。
乳剤面が剥がれた影響か、乾燥後はカーリングします。

「あの時の写真」に、お客様がいつでも再会できるように、ささやかな気持ちを込めて続けています。