佐藤写真館

「春来る鬼」を訪ねて

昭和63年11月8日

お不動様に惹かれて、今年は春から五度も参詣の幸運に恵まれた。一つには 「春来る鬼」の映画撮影に好奇心を抱いてのお参り。また三陸リゾートエリアの構想を胸に抱いて、頼まれもしない愚か者の計画設定と空想を夢みる楽しさで、老境にかばねもやまず駆け巡る。カメラを抱えて方々の、世に知られない事物を探し訪ねる。この心境は他人にはわからない。生き甲斐を独り占めにかみしめる喜びである。

退屈な人は見て

ウヌ惚れとカサッケのない者はない…と諺にもあるが、私はそんな気持ちはさらさらない。長命とポケの予防の妙薬につとめている。そこで私の悪い癖が出て来るのである。毒にも薬にもならない、腹も立たない笑いばなし退屈な人は見てけらっせん。 先頃、「野形のお不動様」の題名で本紙に投稿したが、「豊年万作」の唄より反響がなかったようだ。三陸町観光協会にも同文コピーを送りましたが何の音沙汰もない。音沙汰があろうがなかろうがよいのです。私の書いているのは夢を書いているのです。重要な参考資料などではありません。

立派なセット

映画の撮影セットをみて、まず感じたのは、バラックのあばら屋かと思っていたが、行ってみて、まずまずたんまげてしまい、立派な構造建築に目を見張るようだった。ここが映画となって日本全国、いや世界各地で上映されることを思えば胸がワクワクする。

このセットもやがて解体されるのかと思えば無念さが心をよぎる。私の構想が次々と追い打ちをかける。この広壮豪壮な設計と、門柱などは高々と太い材料で、昔のお城の扉を思わせる頑丈な本物の金具で構えも立派だ。裏側を補修して利用すれば、観光「春来る鬼の家」として充分、お客様を吸収できると思う。

十月二十四日、一ノ関より西へ八里、栗駒ケ岳、須川温泉に紅葉を訪ね、温泉に惹かれて日帰りでマイカーの旅に行ったが、来る人々と車の多さにはおどろいた。ただ山を見るだけなら三陸沿岸にだって雄大な絶景がたくさんあるが、残念ながら北上山系には火山脈が通っていない。

私の願い

温泉のある観光地には及ばないが、名水・不動滝の湯では売れないだろうか。

〝鬼の家″と〝不動滝の湯〟を宣伝してリゾートの一つにし、セットは解体する前に小林旭監督からそのまま払い下げが出来ないものかと思う。まだまだ構想は飛躍するが、このチャンスを見逃すことはないと思うのだが…。

先年は、水谷豊主演のテレビ「天城山殺人事件」で当市の名刺「洞雲寺」「長安寺」等でロケーションがあったが、三陸地方の文化財も最近、中央から注目されだした。察するに、映画撮影の重要な条件は、近代的な建造物や電柱電線ー本でもあると撮影は拒否されるようだ。

やすらぎの場に

先の不動神社のロケにも鳥居や名水の説明板まで引き抜いて、自然のままの景観を撮影した。当事者のご親切はわかるが、心して神域には、目障りな物はなるべく置かない方が良いと思う。必要ならば神域の入り口に建設すべきだ。人は自然を求め、老人はことさらに〝やすらぎ″の場所を探し求める。

三陸町観光協会さん、がんばって「春来る鬼」のセットは残してもらって下さい。地元民が協力し、正三建設さんも応接して、セット存続をぜひ物にして下さい。予算面からみても立石山の権現様の何分の一かで出来るようだし、やりようによっては〝不動観光〟の方がメリットがあると思う。

当事者の皆さん、この「不動滝観光」をぜひ実現させて下さい。

この夢を逃がすな、百年計画で―。